FOOD AND LIQUR

≪至福の30㏄≫  ホワイトホース ファインオールド  オールドボトル-1980’s

 近頃、会社を勇退した大先輩の好きなウイスキーはホワイトホース飲み方は昔からずっと水割りだったらしい。

 役員まで登りつめた大先輩がなじみの店で飲むときは時は決まってホワイトホースのボトルと水割りセットが用意された。大先輩は薄めの水割りをクイクイっと4分の1ぐらい飲んでグラスを置く。冗談や昔話をして、ドッと笑ってまたグラスを手に取る。

 漢の本懐は出世。酒の味などは気にせず、大先輩の話に常に耳を傾けながら、目立たぬように空いたグラスを手に取り、手際よく水割りを作り、そっとグラスを手元に戻し、うまそうに同じ酒を飲むというのがあるべき社会人の姿である。

 私にとって苦い時間を象徴する酒であるホワイトホースを、キリンは、2018年夏、「新しい飲み方」で売出した。スモーキーな香りが膨らむワンランク上のハイボールとしてだ

 今回、至福の30㏄で扱うのは大先輩が若いころに嗜んだと思われる特級時代のホワイトホースファインオールドだ。結論から言えば、水割りにもソーダ割りにももったいない、うまい酒だ。

 開栓した特級表示ボトルは、30年ほど前に流通した1980年代のものと推測される。ウイスキーブームの真っただ中、3~4千円で流通していた商品と推測される。バブルに向っかて元気があった時代だった。大先輩を含め、当時のサラリーマンたちはこんなうまい酒を飲んでいたんだから経済も上向きになるはずだ。

 香りは、カラメルと貴腐葡萄の甘みとスモーキーな香り、終わりにかすかにウッディーな香りも残る。甘味と苦みがほぼ同時に現れる。果物の甘さとカラメル系の甘さと苦み、ピートフレーバーと消毒液のような辛味も感じるが熟成感があって刺々しくはない。後味はしつこくなくさっぱりとしている。特級時代のホワイトホースの味に文句をつける人は、普段から相当いい酒を飲んでいる人だ。

 個人的には、ストレートか、トゥワイスアップで飲むのがおすすめだと思う。しかし、前出の大先輩は、特級時代から間違いなく〝あの〟飲み方で飲んできたと思う。というのも、大先輩は強いお酒があまり得意ではないのだ。試に、オールドボトル(左)とレギュラーボトル(右)でそれぞれ水割りを作ってみた。


 割り水はサントリー南アルプスの天然水。氷はスーパーで購入したロックアイスを使用。両ボトルをキンキンに冷えた水割りにした結果、両者とも薄く希釈されたため味の差は縮まった。とは言っても、レギュラーボトルは暑い夏に油っぽくてしょっぱい肴をあてにクイクイ飲むのにちょうど良く。オールドボトルの水割りは、依然としてフルーティーな香りスモーキーさがある。食事中に飲むならレギュラーボトルの水割り、食事と合わせるのはもったいなく、食後の一杯にするのがオールドボトルの水割りだ。

 オールドボトルからレギュラーボトルまで飲み続けた大先輩がホワイトホースの味の落ちを気にしない理由は、水割りという日本独特な飲み方にあった。ホワイトホースは今後はハイボールという飲み方で生き延びる。

(写真/文=アライサトシ)

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

pageTop