FOOD AND LIQUR

⦅至福の30cc⦆シングルモルト 余市 リミテッドエディション2019

特別な思い出とある余市。

祖父の体調が急変し亡くなった日の夜、親戚が実家に集まり、祖父が寝室として使っていた和室に遺体を安置するスペースを確保しました。間もなく、台所にあった開栓前のノンエイジの余市で親戚の男衆で「献杯」することになりました。与市は湯呑に豪快に注がれました。飲み方はストレート。開栓したばかりの余市はとてもスムースに感じられました。

余市を飲むのはそれ以来。余市は、祖父の死とその死を受け入れるための十分な時間がなかった経験に結びつくためなんとなく嫌厭していたのだと思います。

今回ご紹介するのは余市リミテッドエディション2019。余市蒸留所で樽詰めされた1960年代、70、80、90、2000年代の原酒をヴァッティングしたウイスキーです。年の瀬が迫った12月中旬に3割ほど飲まれたボトルから頂くことになりました。

変哲もないアンバー色。顔に近づけて色を確認していると華やかな香りが漂ってきます。自然と期待が高まります。企画上、本来なら30ccで注文するのが通例ですが、予算面の制約もあり、半分の15ccで注文しました。

華やかな香りはスプリングバンク21年と同等もしくはそれ以上、口の中ではさらに華やかな香りとダークチョコもしくはキャラメルのような甘みが広がります。余市らしくピート香が余韻として強めに残りますが、丸く角の取れた感じ。ジャパニーズウイスキーの限界を超えた味わいでした。蒸留所で働く人々やブレンダーのクラフトマンシップ、プライドと誠意を感じるウイスキーでした。

レギュラーの余市はどんな味だったっけな。

余市とともにある祖父を失った記憶は熟成を重ね、しっかり見送った記憶へと昇華したような気がします。

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