COLUMNS

≪カメラレビュー Nikon FM10≫ ニコンのフルマニュアル機 基本動作 使い方を紹介 

 愛着があるから手放せないのか。売っても二束三文だから手元に残るのか。そばに置くには理由がある、を考える、カメラ考。

第1回 Nikon FM10

DSC_0030

FM10( Nikn Df + AF-s NIKKOR 60mmf2.8 )

 フィルムかデジタルか。

 そんな論争を聞いたり読んだりしなくなって久しい。画像の加工、保管、そして共有などの利便性、ランニングコストを抑えられる経済性から、多くのユーザーがデジタルカメラを選んでいる。そのためフィルムユーザーは減少し、製造販売されるフィルムカメラ、フィルムもめっきり減った。

 ご紹介するFM10は、こんな時代でも製造販売が続いている世にも「奇妙」なフルメカニカルマニュアル一眼レフカメラだ。フィルムの装填、シャッタースピード、絞り、ピント合わせ、フィルムの巻き上げ、取り出しなどの全てを撮影者が手動で行う、言わば、「苦労は買ってでもしろ」を体現する非常にレアなカメラだ。

 趣向は人それぞれではあるが、ライカや往年の名機に備わる「所有欲」を満たすような怪しい輝きは持ち合わせていない。どちらかといえば「教材」に近い存在。1995年にデビューし、プロ用マニュアル一眼レフフィルムカメラ・ニコンF3の20年にも及ぶ販売期間(1980年~2000年)を越えている

Df+60mmf2.8

FM10とAi-Nikkor 50mm F=1.4。35mmフィルムカメラにおける焦点距離50mmの感覚を叩き込んでくれた名コンビ

 私が初めて買った一眼レフはFM10だった。

 2005年、画質でフィルムがデジタルと拮抗していた時代。写真がどんなものか興味を持ち、訪れた東京新宿にある老舗カメラ店で紹介されるがままに購入した。Ai Nikkor 50mm F1.4も同時に購入し、翌日から外出時は必ず持ち出した。
 今ではデジタルカメラで写真を撮るようになり、まったく使わなくなった。保管中のレンズをホコリから守る“大型リアキャップ”として活用。フィルムを通さなくなってかなり久しい。

 写真を教えてくれた「恩師」に対しとても不敬な態度をとっている。家でひっそりと余生を過ごしているところを目撃するたびに「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」と直視するのを避ける。私にとっては重要なアイコンであり続けている

 装着したレンズのピントリング、絞りリングの他に、使用する際に必ず操作する ①「巻戻しクランク、巻戻しノブ/裏蓋開閉ノブ ②「シャッターボタン/巻き上げレバー」 ③「シャッタースピードダイアル」をご紹介する。

 

①「巻戻しクランク、巻戻しノブ/裏蓋開閉ノブ」について

(Df+70-180mmf4-5.6)

解除状態の巻き戻しクランク(Nikon Df + NIKKOR 70-180mmf4-5.6)

 「巻戻しクランク、巻戻しノブ/裏蓋開閉ノブ」は、裏蓋の開閉、つまり、フィルム装填、撮影済みフィルムの巻き取りと取り出しの際に必ず操作する最も重要な装置の一つ。必要十分な機能だけがまとめられている。
裏蓋の開閉とフィルムの巻き上げを合わせた構造は、完成度が高く、プロ機も採用している。プロ機ではF3で採用された。完全自動化を目指す流れの中でも、撮影したフィルムをいかなる場合でも取り出せるように手動で操作が可能な形でF4、
F5、F6でも採用されている。

 巻き戻しクランクを真上に引き上げると裏蓋が「パコッ」と気持ちの良い音を立てて開く。パトローネ(フィルムが入った缶)からフィルムを引き出し、カメラ側でフィルムを巻き取るスプールに差し込む。
 スプール側の歯車がフィルムの上下にある穴に噛むように調整し、裏蓋を閉めずに2枚ほどシャッターを切る。しっかりと巻き取られている様子を確認したら、クランクの上部に収納されたノブを起こし、(この時にクランクごと引き上げてはいけない)クランクに印された矢印方向に軽く回すとフィルム面が平らになる。初めて裏蓋を閉じる。
この時点からフィルムカウンターがスタートする。シャッターを2、3回切る。カウンターが0か1になったら撮影可能となる。撮影後はカメラの底にあるロック解除ボタンを押し、ノブを矢印方向に回して撮影済みのフィルムをカメラ内のフィルム缶にに巻き取る。ノブを回すテンションが弱くなったらフィルムがスプールに収められた証拠。この時点で初めて裏蓋は開けられる。

 デジタルカメラのメモリーカードスロットルの蓋と同じ役割だが、フィルムを巻き戻さないで開くと一瞬にしてフィルムが感光し、フィルムを台無しにしてしまいまう。

 ②「シャッターボタン」「巻き上げレバー」について。

FM10のシャッターボタン(Df+70-180mmf4-5.6)

FM10のシャッター回り(Nikon Df+NIKKOR70-180mmf4-5.6)

 シャッターボタンは金属製。半押しの深さは約2mm。それ以上深く押すとシャッターが切れる。レリーズコードのネジ穴が中央にある。

 FM10には、ファインダー内に簡単な露出計があり、シャッターボタンの半押しで作動する。露出計はSR44酸化銀電池2個、またはLR44アルカリ電池2個、CR-1/3Nリチウム電池1個をカメラの底部にあるバッテリー室に装填すると機能する。
 私のFM10には電池がかなりの長期間入っていない。電池を入れっぱなしにしておくと、電池の液漏れによって接点に腐食が発生することがある。

 巻き上げは、F3などの高級機ではないので、分割巻き上げができないワンストローク仕様。最後までしっかり巻き上げきらないとシャッターは切れない。露出、ピント、構図を決め、シャッターボタンを押しても、巻き上げが不完全でシャッターが切れないといったことを数回経験している。

 フィルム巻き上げレバーのさらに右に見える小さなレバーは多重露出レバーで、手間に引きながら巻き上げを行うとフィルムのコマを送らずにシャッターのみがチャージされ、1つのコマに重ねて露光できる。今風に言えば画像合成。使うことはほとんどない。

 ③「シャッタースピードダイアル」

DSC_0037

FM10のシャッタースピードダイヤル(NikonDf+NIKKOR70-180mmf4-5.6)

 

 シャッタースピードダイヤルはプラスチック製。操作時のクリック感はしっかりとしていてNikon Dfと同等だ。シャッタースピードは1秒~1/2000秒まで選べる。ストロボの同調速度は1/125秒以下。Bは「バルブ」でシャッターボタンを押している間だけ露光する。1秒より長い時間露出したい場合はレリーズコードを使用する。

 露出計を正確に作動させるためには、シャッタースピードダイヤルの外枠を上方に持ち上げて回転させ、装填するフィルムのISO感度に合わせる。設定できるISO感度の範囲はISO25から3200まで。現在のデジカメと比べると狭い選択範囲だが、当時はこのぐらいで十分だった。

おまけ「プレビューレバー」

絞り込みレバーを引いた状態( NikonDf+NIKKOR60mmf1.8)

絞り込みレバーを引いた状態(NikonDf+NIKKOR60mmf2.8)

 カメラを正面から見てレンズの付け根、マウント左側のレバーをファインダーをのぞきながらボディー側に倒すと被写界深度を確認できます。平たく言うと、ピントが合う範囲を再現してくれる。

 レンズの絞り値で、ファインダー内がかなり暗くなるが、フィルムを現像するまで被写界深度を確認できなかった事を考えると、なかなか便利な機能だった。

  撮影時の基本的な機能を見てきたが、実は紹介してきたほかに機能らしい機能はセルフタイマーとマウント右上の測光ボタンぐらいだ。フィルムを2、3本無駄遣いすれば使い方はある程度は身つく。

文/写真=アライサトシ

2 件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

pageTop