WebマガジンAGO≪アーゴ≫は「日常に非日常のエッセンスを一滴、二滴加えてあげれば毎日が楽しくなるはず」をテーマとしています。
“夜行走行”では星の光や人々の営みが描き出す光跡で彩られた空間をカメラに収めていきます。
長時間露光で浮かびあがる肉眼では見えない非日常な空間をお楽しみください。
第6回は夜更けの積善館本館周辺(群馬県吾妻郡中之条町)をご紹介します。
四万温泉は、群馬県北西部に位置します。戦国時代に湯宿が開かれ、江戸中期には温泉宿の経営がなされていたと伝わっています。周辺の交通環境が良くなった明治後期から湯治場として栄えます。1954年(昭和29年)に温泉や景観などが特に優れた温泉地として青森県の酸ヶ湯温泉、栃木県の日光湯元温泉と共に国民保養温泉地の指定を旧厚生省(現在の所管は環境省)から受けました。積善館本館は、実際に宿泊できますが、四万温泉の歴史を伝える見学場所しても人気です。
積善館まで数百メートル手前の温泉旅館と土産屋、食料品店が軒を連ねる通りです。GW中でも夜になると静かになります。24時間営業のコンビニもありません。夜はゆっくりと休む健康的な温泉です。
街灯や宿の明かりに照らされた四万川。温泉街は川に沿うようにひらけています。積善館本館へは奥に見える橋を渡って向かいます。
橋を渡ると左側を古い木造建築の土産屋、右側を鉄筋造りの四万グランドホテルに挟まれた路地に入ります。夜更けになると人通りは全くありません。
この路地の先を左に曲がると積善館本館はあります。
積善館本館は現存する日本最古の木造湯宿建築とされています。増改築が繰り返され今の姿になっているようです。1996年(平成8年)に県重要文化財に指定されました。2001年に公開されたジブリ映画「千と千尋の神隠し」で物語の主な舞台となる八百万の神々が訪れる湯屋のモデルとなったのは有名な話です。
実際はもっとひっそりとしています。
文/写真=アライサトシ