ブレンデッドウィスキー、オールドパーはお中元やお歳暮の定番商品でした。親父世代からの頑な支持がありました。最近ではシングルモルト人気の陰で酒屋さんでも目立たない場所に置かれているのをよく見かけます。12年、18年、スーペリアは飲みやすくて美味しいウィスキーに仕上がっているのに少し残念な気分になります。
シングルモルト、シングルカスク、カスクストレングスなど主張がはっきりしているウィスキーが注目される昨今、オールドパーの中庸な味わいは逆に新鮮に感じられます。
日本の政財界にはオールドパーの愛飲者が多く、近頃、その言動が再注目されている元総理大臣田中角栄もその一人でした。
田中が神奈川県大磯で、政界の大御所だった吉田茂に“謁見”した際、吉田が田中にオールドパーを出したという逸話があります。謁見後、田中が仲介人である佐藤栄作に吉田からオールドパーが出されたことを伝えると、「あれが出たのなら、おまえ、気に入られたのだ」と佐藤が返答しといいます。以来、田中はオールドパー一辺倒になったと言われています。
この手のコテコテ話、今となっては時代錯誤を感じる人も多いでしょうが、小生はちょっとしたロマンを感じます。
さて、今回試飲するオールドパーは1980年代のオールドボトルです。カラメルを思わせる甘い香り、芳ばしい麦芽香、若干のスモーキーさもあります。 口当たりはなめらかで、麦芽と穀物の甘み、酸味を含んだドライフルーツのような甘味もあります。余韻は短めですがさわやかな甘みが残ります。
参考資料「私の田中角栄日記」(新潮社・94年刊)
文/写真=アライサトシ
オールドボトル、限定ボトル、レギュラーボトルを問わず美味しかったウィスキーを気ままに紹介、テイスティングする企画。30㏄で広がる非日常の世界をご紹介します。
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